朝日新聞「流通過程で死ぬ犬猫2万匹」記事の雑感
朝日新聞とAERAから、ショッキングな見出しの記事が出ていました。
これは、全国のペットショップ等が行政に提出した「犬猫等販売業者定期報告届出書」を集計した結果のようです。全国の自治体に情報公開請求をして、約15,000件の報告書を集計するだけでも数百万の経費がかかるでしょうし、NPO等ではなかなかできない、とても有意義な調査だと思います。
10月5日発売のAERAに詳細が掲載されるようで、今の時点では上記の記事上のざっくりした内容しかわからないですが、気になる点がいくつかあったので書いておこう。
犬と猫では事情がずいぶん違う
今回の朝日新聞の記事もそうですが、動物愛護関係の記事の多くは「犬」と「猫」をまとめて扱っていて、しかも、「犬猫」と言いながらも、実際には犬のことを中心に述べていることが多い。今回の記事の執筆者である太田匡彦氏も、犬が関心の中心のようで、以下のような著作もあります。犬を殺すのは誰か ペット流通の闇 (朝日文庫)
しかし、犬と猫とでは、殺処分にしてもペット流通にしても、問題の構造がずいぶん違っています。「犬猫」とまとめて論じてしまうと、猫に関しては誤解が生じたり、本当の問題が埋もれてしまいやすくなる。これはけっこう大きな問題だと感じています。
ペットショップでの猫の流通は意外と少ない
例えば、今回の記事のテーマである「ペット流通」に関して言えば、以下のようなデータがある。
図1:ペット(犬)の入手先
これは、犬の飼い主に対して、その入手経路を尋ねたもので、「ペット専門店から」が47%、「ブリーダーから直接」が19%で、おおよそ4分の3の飼い主が、「ペット流通」を通じて犬を入手していることになります。これだと、確かに「犬の愛護・福祉」において、ペット流通業界が果たすべき役割は極めて大きいと考えられます。
一方で、同じ質問を猫の飼い主にすると、以下の結果に。
図2:ペット(猫)の入手先
このように、「ペット専門店から」が15%、「ブリーダーから直接」が4%で、「ペット流通」を通じて猫を入手している飼い主は全体の5分の1程度ということになります(複数回答なので厳密ではないです)。
もちろん、数が少ないから問題にならないかと言うとそうではないのですが、それでもこの違いは重要ではないかと思います。
「死因」についても考えよう
記事上で「流通過程で死んだ」という表現がたくさん出てきますが、これもちょっと気をつけないと危険だと感じます。
というのも、この「流通過程での死亡」の数の中には、「不適切な扱いが原因となった死亡」と、「生まれつきの病気等での死亡」が混ざっているはずです。前者はもちろん大問題ですが、後者はどうやっても避けようがない。
元データである「犬猫等販売業者定期報告届出書」には死因の記載義務がないので、集計のしようがないのですが、だからと言ってそれを、いかにも「全ては流通業者が不適切な扱いをして死なせてしまっている」と言わんばかりに書いてしまうのも、問題があるように思われます。
おそらく、どこかに「子犬・子猫の病気での死亡率」を調べたような論文等があるでしょうから、それを差し引いて推計するくらいのことはしてもよいのでは。
動物愛護というテーマに関しては、極端な議論がなされやすい傾向があり、今回のようなショッキングな記事は数字が独り歩きすることも多い。だからこそ、情報を出す側は、もう少し慎重な物言いをしていくことが大事なのかなと感じました。
野良猫を飼い始めて1年半がたちました
うちには2匹の猫がおりまして、そのうち1匹(シンスケ氏)は、もともと完全な野良猫でした。 (飼い始めた経緯は、以下の記事などにも書いてます)
このブログ、「野良猫、飼う」などの検索キーワードで比較的上位にひっかかるようで、野良猫を飼い始めたばかりの方や、野良猫を飼おうか悩んでいる方によく読んでいただいているようです。
そうした方の大きな悩みの一つは、「野良猫って、飼ってもなかなか慣れてくれないのでは?」というところではないかと思われます。これ、不安ですね。私も不安でしたし、今でも少し不安です。
「野良猫が人に慣れるか」というのは、個体差もものすごく大きいようなので、決して軽はずみなことは言えないのですが、わが家の元・野良猫のシンスケ氏に関して言えば、一進一退しながらも、最近はかなりご機嫌に暮らしています。
野良猫を飼おうとしている方、飼い始めた方の参考になるかどうかはわからないですが、シンスケと我が家のこれまでについて、ちょこっと振り返ってみようと思います。
元・野良猫 シンスケ氏の2年間の記録
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2013年9月ごろ:生後数か月くらいで我が家に顔を出すようになり、たまにエサをあげる関係に。エサを手から食べてくれるくらいには慣れていたけど、なでさせてはくれなかった。
- 2014年1月ごろ:それから半年くらい経ち、(おそらく)生後10か月くらいの時点で、市販のケージをつかった罠で捕まえて、飼い始める。当初は全然慣れてくれないし、威嚇の連続。(こちらの心が折れそうになる)
- 2014年2月ごろ:獣医師さんの指示に従い、2週間くらいはケージ暮らし。少しずつ落ち着いてくる。ケージの扉を開けても、なかなか出て来ない。
- 2014年3月ごろ:ちょっとずつ慣れてきて、エサも近くで食べるようになり、おもちゃで遊んだりもするようになる。良い感じ。
- 2014年4月ごろ:なかなか距離が縮まらない。昼間は留守にすることが多く、一匹で過ごすのはさびしかろうと考え、猫をもう1匹飼おうと考える。
- 2014年5月ごろ:猫の保護団体さんから、猫を1匹譲渡してもらう。ゴマ氏、2歳♂。ゴマ氏はかなり人慣れしており、活発で大柄な猫。当初、シンスケ氏はゴマ氏と喧嘩をする場面もあり、必ずシンスケ氏が負けていた。
- 2014年6月ごろ:シンスケ氏とゴマ氏の関係が改善しているように見える。互いにグルーミングしたり、寄り添って眠ったり。かわいい。しかし、その頃からシンスケはゴマとばかり遊んでいて、人間にはあまり寄ってこなくなる。ちょっと焦る。
- 2014年9月ごろ:夏が終わり、だんだん涼しくなってくると、猫のほうから人に寄ってくるようになる。夜はベッドに乗ってきたり、床に座っていると近くでうたたねをしたり。ついにここまで来たか、と感無量。
- 2014年11月ごろ:「野良猫保護のプロフェッショナル」を自称する人からアドバイス。「なかなか慣れない猫は、無理やりにでも抱っこしてマッサージするのを1カ月くらい続けると劇的に慣れてくれるよ!」とのこと。これをバカ正直に実行するが、完全に裏目に。シンスケは、人を「敵」と認識するようになり、半径2メートル以内に近づくと逃げるようになる始末・・・。本当に後悔。
- 2015年春:シンスケとの距離が遠い。近くでくつろいでいるように見えても、こちらが少し動くと警戒の体勢をとる。横でずっと伸びきっているゴマ氏とは大違い。このまま慣れてくれないのか??
- 2015年夏~秋:また、少しずつ距離が縮まっているのを感じる今日この頃。今朝は、朝起きたらシンスケ氏がベッドの上ですやすや眠っていました。まあ、ベッドの隅っこですし、こちらが動いたらすぐ出て行ってしまいましたが。
野良猫を飼い始めて1年半たって思うこと
この通り、シンスケと出会ってから2年、飼い始めてから1年半が経ちました。ほんとうに、反省するところも多々ありますが、シンスケ氏との距離は確実に縮まっていることを感じますし、このゆっくりと仲良くなっていく過程がちょっと楽しかったりもします。この1年半で得たものをまとめるとすれば、以下のような感じでしょうか。
気長にいこう
野良猫に慣れてもらうには、特効薬のようなものは無いように感じていますが、ひとつだけ言えることは、「焦ったらいかん」ということ。上の「9」で書いたような、無理やり掴まえて撫でまくるなんて、もってのほか。今になって冷静に考えれば嫌がられるのは当たり前なんですが、当時は早く仲良くなりたくて焦るあまり、そのことに気付かなかった。
気長にどっしりと構えて、向こうから警戒を解いてくれるのを待つ、という態度が重要なのかなと思います。
もう少し早く飼い始めたほうがよかったかも
シンスケを飼い始めたのは、彼が生後10カ月くらいのとき。
猫は生後数週間から3~4カ月くらいが「社会化期」と言われ、この時期に人と多く接していると人に慣れやすいと言われているようです。この「社会化期」というものが、どれだけ厳密なものなのかわからないですが、確かに、子猫のうちに人に慣れていたほうがよいのは感覚的にもわかります。
まして、シンスケ氏は生後数カ月のころからわが家に顔を出していたのですから、もう少し早く捕獲して飼い始めていれば、今頃はもっと慣れてくれていたのでは、と思うことも無いわけではありません。
野良猫だからこその魅力も確かにある
でも、やっぱり、今のなかなか慣れない感じのシンスケ氏は、とても魅力的です。なんでしょうか、このかわいいツンデレ猫は。こんな魅力的な猫は世界中探してもそういないですよ。
ずっとツンツンして近寄っても来ないと思ったら、なぜか急にすぐ近くで無防備な姿を見せる。おそるおそる撫でると、けっこう気持ちよさそうにしてくれる。調子にのって腹もなでようとすると急に真顔になってさっさと行ってしまう。
この、ゆっくりじわじわ仲良くなっていく感じ、最初から人慣れしている猫とは全く違う味わいがある気がします。
続・データから考える「猫の殺処分」問題 ~殺処分が起こる原因とその対策~
先日、以下のような記事を書きまして、今回はその続編です。
前回のおさらい
前回の記事では、ざっくりと以下のようなことを書いていました。
- 動物の殺処分にまつわる問題は、デリケートかつ複雑で、主観的な議論に陥りやすい。だからこそ、客観的なデータの蓄積と、それに基づく議論が必要なのではなかろうか。
- 「客観的なデータ」は、環境省やNPOによって整備されて、公表されてはいるものの、一般人からすると実態がどうにもわかりにくい。それは、「見せ方」の問題と、「データ整備の方法」の問題の2つに原因があると思われる。
- 「見せ方」の問題に関しては、例えば以下のような図に示すと良いのでは??
- 「データ整備の方法」については、用語の定義があいまいで、自治体間で解釈が異なっていることがまずい。あと、調査の項目についても、いくつか再考の余地がありそう。
図1(再掲):
前回は、このように「入手可能なデータを見やすく整理してみた」、というのが主な内容でした。ただ、これだと肝心の「殺処分を減らすにはどうすればよいのか」というところについてはほとんど何もわかりません。
ということで、今回はもう少しデータを付け加えていって、そのあたりについても考えてみようと思います。
まず、猫の殺処分を減らすには、大きく分けて、保健所等での猫の「引き取り数を減らす」ことと、保健所に連れてこられた猫の「譲渡、返還を増やす」という2つの方向性があります。もちろん両方大事なのですが、今回はひとまず前者について考えてみることにします。
猫の「引き取り数」を減らすには?
これを考えるためには、「猫がそもそもどのような理由で保健所等に引き取られているのか」そして、行政では「殺処分を減らすためにどのような取り組みを行っているのか」という情報を知る必要がありそうです。
保健所での「引取り」が起こる原因と対策
そこで、以下のようなグラフを作ってみました。各自治体では、保健所等で猫を引取る際に、猫を持ち込んだ理由を書かせることになっており、その内容の集計結果がNPO法人地球生物会議の発行している『全国動物行政アンケート結果報告書』で示されているのです。ちなみに、複数回答ありなので、各項目の数を足し合わせても100%にはなりません。
図2:
これを見ると、飼い主が「世話ができなくなった」ことで、保健所に連れてこられるケースが圧倒的のようです。(というか、保健所に連れてきているという時点で、全部これに該当するような気もしますが。)
もう少し具体的な回答では、「近所からの苦情」や、「飼い主の病気・死亡」、飼い主の「転居」などがきっかけで、保健所に連れてくるケースが多いようです。これらは、おそらくは子猫よりも成猫が多く当てはまるのでしょう。
また、「計画外繁殖」の項目も非常に多くなっています。これは、飼い猫が予定外に妊娠して出産した、ですとか、野良猫が自分の家の敷地内で出産した、というケースでしょう。当然、これらは子猫がほとんどのはず。
これらの情報を整理して、さらに、行政が実施している猫の引取り数を減らすための取り組みを追記したものが、以下の表です。
図3:保健所等における猫の引取りの原因と対策
猫の「引取り数」を減らすには、ここで示している「主な原因」にアプローチしていくことになります。とは言っても、行政ではすでに様々な取組を実施しているので、それらを点検し、もっとこうしたらよいのでは??ああしたらよいのでは??ということを議論し、試行錯誤しながら、引取り数を最小化していく、というのがまっとうなプロセスだと考えられます。
例えば、(本当に例えばの話ですが)、上の表(図3)を土台にすると、以下のような議論ができそうです。
- 「所有者からの子猫の引取り」は、全体の28%と大きな割合を占めていて、ここを減らすことができれば、猫の殺処分の削減に大きく貢献しそうだ。
- ここを減らすためには、「飼い猫の計画外の妊娠・出産」を減らしていくしかない。そのためには、「これ以上猫を飼えないよ」という家では、飼い猫になるべく不妊手術を受けてもらうか、完全室内飼いをしてもらう必要がある。
- そもそも、飼い主が猫に不妊手術を受けさせない理由としては、「費用的な負担」や、「不妊手術に対する心理的な抵抗感」がありそうだ。
- 費用負担がネックになっているのだとしたら、行政がその費用の一部を補助することで、不妊手術率は改善できるだろう。でも、猫を飼っていない人からすると、飼い猫の不妊手術に税金を使うことは納得しがたい。
- だとすれば、猫税のようなものを猫の飼い主から徴収して、それを財源に猫の不妊手術への助成をすればよいのでは??
これはあくまで例ですし、つっこみどころもたくさんあるのですが、基本的にはこんなような形で色々と議論をしていくことが重要なのかな、と思っております。
まとめ:
今回のまとめとしては、以下のような感じでしょうか。
- 猫の殺処分を減らしていくためには、「引き取り数を減らす」ことと、保健所に連れてこられた猫の「譲渡、返還を増やす」という2つの方向性がある
- 「引取り数を減らす」ための方法を考えるには、まず、猫の「引取り」が起こる原因を整理・分析することが大切
- そのうえで、行政が実施している取り組みを点検し、客観的なデータに基づきながら、改善点を探っていくという姿勢が求められる
最後に、わが家に住まう謎の生命体の撮影に成功したので、この場を借りて公開いたします。
データから考える「猫の殺処分」問題 ~「保健所の猫」は、どこから来てどこへ行くのか~
明日から「動物愛護週間」ですね。この時期は、新聞やテレビ等でも動物愛護関連の話題をよく目にしますが、その中でも特に頻繁に取り上げられるのが「犬・猫の殺処分問題」です。
この問題、実はかなりデリケートですし、極端なことを言う人も少なからずいて、下手なことを書くと炎上しかねないテーマであることは確かです。
でも、逆に言うと、世の中に客観的な情報があまり出ていなくて、そのために主観的な議論がなされやすくて、だからこそ議論が荒れやすいという側面もあるのではないかと感じています。今求められているのは、客観的な事実の積み上げではなかろうか。
そこで、環境省が公表している『犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況』と、NPO法人地球生物会議が出している『全国動物行政アンケート結果報告書平成24年度版』のデータを使って以下のような図を作ってみました。
「保健所の猫」は、どこから来てどこに行くのか
図1:
この図は、埼玉県の保健所等に連れてこられた猫が「どこから来て」、「どこに行くのか」の割合を示したものです。なぜ埼玉県かというと、ここは動物愛護の先進地域として有名で、データがかなり充実している&信頼性が高いと考えられるからです。というのも、動物愛護行政に関する業務は、都道府県庁や政令市・中核市が管轄していて、自治体によって統計の取り方や正確さが大きく異なるようなのです。だから、下手に全国のデータを引っ張ってくるよりも、信頼できる地域のデータを使った方が精度の高い分析ができるはず。
「保健所の猫」はどこから来るのか
まず、図の左側を見てみたいと思います。これは、保健所に収容される猫がどこから来るのかを示しています。
データ上では、「所有者からの引取」、「所有者不明の引取」、「負傷収容」と3つに分かれていて、それぞれ「子猫」と「成猫」でも分かれています。
このうち、「所有者からの引取数」は、飼い主がいたけど、飼いきれなくなったなどの理由で保健所に連れてこられた猫の数を指します。
「所有者不明の引取数」は、野良猫や捨て猫・迷い猫を指します。ある自治体職員の方に聞いたところによると、この「所有者不明の引取」のうち大多数は、親猫が事故や育児放棄などでいなくなってしまった子猫たちとのこと。
最後に「負傷収容」ですが、これは事故や病気などで動けなくなっている猫を保健所等が収容したものを指します。ここが微妙なところなのですが、この「負傷収容」の中には、収容した時点で亡くなっている猫や、瀕死の状態で保健所に運ばれてきて、そのまま亡くなってしまう猫なども含まれているケースがあるそうなのです。だとすると、ここのカテゴリを、元気な状態で連れてこられた猫と一緒にして考えてしまうと、思わぬ誤解を招くことになりかねません。ですから、今回は「引き取り」と、「負傷収容」は完全に切り分けて図を作っています。
中の数値を見ていくと、平成24年度に埼玉県の保健所等が引き取った猫(負傷収容除く)は1,468匹。このうち46%が「飼い猫」で、54%が「野良猫等」ということになります。そして、引き取られる猫のうち、実に87%が「子猫」。悲しい・・・。
「保健所の猫」はどこへ行くのか
次に、図の右側を見ていきます。ここは、「保健所の猫」たちがどこへ行くのかを示したものです。いちおう、グラフも作ってみました。
図3:
これを見ると、保健所の猫のうち、じつに84%が「殺処分」という最期を迎えています。埼玉県は行政がかなり譲渡活動に積極的なのですが、猫の「もらい手」が圧倒的に足りないというのが現状のようです。
グラフのなかで、「外部団体・ボランティアへの譲渡」という項目がありますが、ここが今、どんどん伸びてきているという情報もあります。
今後、殺処分をさらに減らしていくためには、「外部団体・ボランティア」は極めて重要な役割を担うことになるはず。行政にとっても、こうした団体や人たちの活動をいかに支援し、連携していくかが、大きな政策課題になっているようです。
でも、これも自治体によって温度差がかなりあって、例えば同じグラフを全国平均で作ると、以下のようになります。
図4:
もちろん地域によって状況が大きく違うので一概には言えないですが、埼玉県は全国平均よりもかなり「外部団体・ボランティアへの譲渡」に力を入れていて、それが「殺処分」の比率を全国平均よりも大幅に押し下げている、というようにも読み取れます。埼玉県すごい。
猫の殺処分問題について、今の時点で言えること
このような形で整理してみましたが、もちろんこれはただの「データ」であって、本当に重要なのは、ここから何を読み取り、どのような手立てを講じていくか、ということです。それについては、また改めて考えて書いてみようとも思いますが、いちおう、ここまで書いてきて考えたことを、少しだけ書いておこうと思います。
統計の取り方はもう少し考えたほうがよさそう
最初のほうでも述べましたが、「殺処分」の問題は非常にデリケートで、だからこそデータに基づく客観的な議論を積み重ねていく必要があります。でも、肝心の「データ」が、どうにも使いにくい。
例えば、先にも述べたように、用語の定義がきちんと決まっておらず、自治体によって解釈が違い、全国レベルでの集計が意味をなさない、というのはその代表でしょう。
また、「負傷収容」の中に、「どうやっても助けられない猫(収容時に亡くなってるとか)」と「譲渡先が見つかれば助かる猫」が混じっているなど、分けるべきものが分かれていないのも問題かと。
環境省が、このあたりの用語の定義の統一と、統計項目の見直しをしていただけると、殺処分問題についての正しい理解が広まって、建設的な議論ができるのではないかと思ったりしています。
保護団体・ボランティアの役割ってほんとに大事ですね
図3と図4を比較するだけでも、保護団体やボランティアの活動の重要さが実感できます。
保健所では、施設のキャパシティや予算の問題から、引き取った猫をそんなに長くは置いておけないし、新たな譲渡先を探すにも限界がある。そんな行政の「限界」を補っているのが保護団体やボランティアの存在です。猫たちを殺処分前に引き取り、「一時預かり」と「譲渡先探し」をすることで、猫たちに新しい飼い主が見つかる可能性を引き上げています。
我が家でも、「譲渡先探し」まではできないけれど、「一時預かり」のボランティアならできるかな。やってみようかな。しかし、我が家の広さでこれ以上猫が増えたら、ちょっとした猫屋敷になってしまう。
もうすこし考えてみます。
追記:続編として以下の記事を書きました。
京都で出会った野良猫は、ちょっと心配になるほど人懐こかった
遅めの夏休みをとって、京都に滞在していました。
左京区(市内の北東エリアで住みよい地域)に宿をとり、その周辺を数日かけてぶらぶらしておりましたが、ここにも野良猫がちらほら。
場所は、市内の南北を貫く鴨川の河川敷。一帯が公園のようになっていて、ベンチもたくさん置いてあるので、気候の良い季節に外で過ごすにはうってつけです。
そんな快適な場所に、子猫が4~5匹ほど、たむろしているのを発見。
かなり人なれしているようで、近くのベンチに腰掛けるとすり寄ってきて、しまいには膝に乗ってくる。こんな野良猫めったにいないですよ。
すぐ近くでは、秋のやわらかい日差しの下、一人の子どもがススキを持って子猫と戯れている。ほかの子猫たちも、木に登ったり、追いかけっこをしたりして思い思いに遊んでいる。
幸福を絵に描いたような秋の午後でありました。
(冬が来る前にちゃんと大きくなれよ。たくましく生きろよ。)
(ここは猫とは関係ない、昼ごはんを頂いたところ。萬亀楼という料理屋。)
迷子になった猫が帰ってくるまでの全記録
ほんとうによかった。ほんとうによかった。猫が帰ってきた!
私の不注意で迷子になってしまった猫が、三日三晩の放浪のすえ、無事に帰ってきてくれました。これは、猫が迷子になってから無事に帰ってくるまでの我が家の全記録であります。
猫がいなくなった(1日目、朝10時)
思い出すだけで自分のバカさに腹が立ちますが、ある休日の朝のこと、目が覚めると猫の気配がないのです。まあ、どうせどっかの箱にでも入ってるんだろ、と思って二度寝までしてしまい、次に起きたのが10時すぎ。いつもならエサの催促が入るはずなのにそれもない。ようやく、これはおかしい、と思って部屋の中を捜索すると、やっぱりどこにもいない!しかも2匹とも!サーっと血の気が引いていくのがわかりました。
なんで?なんでだっけ??と考えてもどうしても原因がわからず、まずは落ち着くためにカーテンを開ける。すると・・・
猫がいた!でも1匹だけ
なぜか庭に1匹いた。しかも、すごく鳴いてる。あわてて窓を開けると部屋に飛び込んできてニャアニャアと抗議の声を上げる。一晩中外に閉め出されていた模様。足元にすり寄ってくる猫をなでながらもう一度考えてみると、どうもこういうことらしい。
前日の夜、寝る直前に庭でちょこちょこと作業をしていた際に、窓を閉めるのを忘れていた → 猫が外に出てしまう → まったく気付かない → 作業が終わって部屋に戻り、窓を閉める → そのまま寝てしまう → 猫、閉め出される
少しお酒が入っていたとはいえ、寝ぼけながらの作業だったとはいえ、こんなアホなミスをするなんて。(我が家の猫たちは室内飼いなので、猫だけで外にだしたことはありませんでした)
もう1匹の猫は??(1日目、11時から15時)
とりあえず1匹は戻ってきてくれてよかった・・・。でももう1匹はどこ??
庭のまわりを見渡すも、なんの気配もない。シンスケはもともと、家の庭によく来ていた野良猫を捕まえて飼い始めた猫なので、周辺の地理には詳しいはず。近くの公園や駐車場、茂みの中など、野良猫時代のシンスケが出没していたスポットを中心に探しまわること4時間。でも、猫って昼間はあまり動かないですし、まあ見つからないですよね。案の定、時間だけが過ぎて日が傾いてきました。
チラシ作る、警察に届ける(1日目 午後4時くらい)
次にしたことは、「チラシ作り」です。マンションの掲示板に張ったり、周辺の人や宅急便の人に配ったりなど、迷い猫の捜索には定番ながら最も効果があるとのこと。ネット上の情報を参考に、こんなチラシをつくりました。(記事の一番上の画像参照)
写真のシンスケはどうしようもなく可愛くて、「絶対に見つけ出す!」と改めて覚悟を決める。保健所等は休日で受け付けていなかったため、まずは警察署に届けることに。ペットの迷子って、「遺失物」にあたるんですね。最寄りの警察署で書類を書いて、チラシも1枚渡して完了。これってどのくらい効果があるんでしょうか。
監視カメラのセット(1日目、午後4時くらい)
このタイミングで、庭に監視カメラもセットしました。以前の記事でも紹介した、外出中に猫を愛でるためだけに購入したスマホ連携の監視カメラ「Safie(せーフィー)」です。
後からも度々登場しますが、これが本当に効果的でした。逃げてしまった猫は、元の場所に戻ってくることが多いそうなのですが、ずっと窓を見続けている訳にもいかないので、見逃してしまう可能性も高い。そこで監視カメラの出番です。これは、モーションセンサーも付いていて、猫が庭に現れればすぐさまスマホにアラートを出してくれるのです。ナイトビジョンの機能もあるので暗い時間でも安心。
監視カメラに猫が映る!そしてまた逃げる!(1日目、午後7時くらい)
警察署に行っている間、ことあるごとにスマホで監視カメラの映像をチェックしていたのですが、何度目かのときに、今までなかった変なものが映りこんでいるのを発見。これ、猫の尻尾ではないか??
(これ、わかりますかね。窓の外の白い段の上に、うっすら猫状のなにかが・・・)
絶対に尻尾でしょ!これ!
急いで家族に電話して確認してもらったところ、確かにシンスケが庭に来ているではありませんか。やった!これでシンスケ戻ってくる!!歓喜に震えました。
でも、声をかけたりエサを置いたりして、色々と手をつくしたにも関わらず、シンスケは戻ってきてくれず、また夜の闇に消えて行きました・・・。
一日近く外に閉め出されていたことで、ものすごく緊張していたのだと思います。警戒心をあらわにして、なかなか近寄ってきてくれなかったとのこと。一度だけ、家の中にまで入ってきてくれたのですが、窓を閉めようとするとまたサッと逃げてしまい、しかも窓を閉めるときの音でまたびっくりして警戒度が上がってしまう始末。
その日は、もう現れてくれませんでした。シンスケ、どこに行ってしまったのか。夜寝るときも窓を開けておいて、シンスケがいつでも入ってこれるようにしておいたのですが、気配すら感じることができなかった。
翌日は大雨。心配募るも猫は顔見せず(2日目)
翌日、朝起きると雨がふっていました。その雨は次第に強まって、夕方から夜にかけて豪雨に。シンスケ、雨に濡れて震えているんじゃないだろうか。私の不注意のせいで…。もう一匹の猫のゴマさんが寂しそうな声をあげるたびに、責められているような気持ちに。ものを食べても味がしない。本や仕事の資料の内容が頭に入ってこない。
雨は翌朝まで降り続き、二日目は結局、一度もシンスケは現れませんでした。つらかった。
唯一の進展は、某所から小さめのケージを手に入れたこと。野良猫だったシンスケを捕まえたときは、このサイズのケージを使ったのです。中に入れたエサを食べている間に、反対側から紐を引いて扉を閉めるというシンプルな仕掛け。またこれでシンスケを捕まえるのさ。
仕事にいかねばならない(3日目朝)
失踪3日目は平日。しがない会社員である私は、仕事に行かねばなりません。後ろ髪をひかれながら仕事へ出かけました。ただ、シンスケの安否を確認するため、監視カメラだけはセットしていきました。
なんかシンスケっぽいのがいる(3日目、午後2時ごろ)
その日の午後2時ごろ、スマホに「カメラがモーションを検知しました」との表示が。カメラの画像を確認すると、茶色の猫が映ってる。
(カメラ位置が悪く、全体像は映ってないですが、確かに茶猫が下のほうに)
これ、シンスケだよね。絶対そうだ!!矢も楯もたまらず、仕事をほっぽり出してタクシーに乗り、家へ向かう。幸い、職場と家はタクシーで15分くらいの距離なのです。すぐ行くから!どこにも行くなよ!と祈りながら。
家について、扉を開け、庭へ向かう。すると・・・・・・、
別の猫でした。
我が家の庭は多くの野良猫たちの通路になっていて、いろんな猫が出没するのですが、確かにそのなかに、全身茶色のトラ柄の猫がいるのです。でも、こいつは少なくともここ数カ月は顔を出していなかったんですよ。なんでこのタイミングでこいつが。絶望だ。神も仏もいないのか。
このときは本当に精神的にまいってしまっていて、こいつがシンスケを苛めたのではないか!?そのせいでシンスケがここに来られなくなっているのでは!?などと思ってしまっていました。なぜそんなことを考えたのか、今となっては謎です。じゃけんに追い払ってしまってごめんよ。
その後、がっくりと肩を落としながら会社に戻りました。
今度は絶対シンスケだ!(3日目、午後7時半ごろ)
気分は最悪ですが、仕事は山積み。無心で仕事をし続けること数時間。また監視カメラのモーションセンサに反応が。見ると、また猫がいる!さっきの野良猫?いや、このたたずまいは・・・シンスケだ!絶対シンスケだ!目大きいし。よく見れば首輪も映ってる。これはもう、間違いないでしょ!やった!やったよ!
また仕事をほっぽり出してタクシーに乗り込む。運転手さんが新人らしく、あまりにゆっくり運転するのでイライラしてしまいましたが、信号はスムーズで昼のときよりも早いくらいの時間で家に到着。「お釣りいりません!」なんて、生まれて初めて言いました。
家に入ると、なんと、なんと、シンスケです!庭にシンスケいました。やった!
そっと窓を開けて、いつものカリカリを出してあげて、冷蔵庫にとっておいたアジをさばき、刺身にしてカリカリに添える。完璧。
と思ったら、もう1匹の猫のゴマさんをケージに入れるのを忘れていて、またゴマさんが外に出てしまう。あわてふためくも、ここで驚かせたら二匹とも逃げてしまう。口から心臓が出そうになりながら、じっとこらえて遠くから見守っていると、
シンスケさん、家に入ってきてくれました。よほど腹が減っていたのか、捕まえる用のケージにすんなり入ってくれて、遠くから紐を引いて扉を閉め、あっさり確保。ゴマさんも、特に外にこだわる感じもなく、雑草を2~3本食べたら満足したのか、さっさと部屋に戻ってきてくれました。
長い三日間でしたが、幕切れはけっこうあっけなかった。でもほんとに、ほんとによかった。心からほっとしました。
反省とSafieすごいという話
今回の件は、本当に色々と反省しました。猫って、あんなに静かに外に出てしまうんだ、と。まったく気付かなかった。外につながるドアや窓を開けるときは、細心の注意を払わなくては。
あと、監視カメラのシステムを作ったベンチャー企業のSafie社と、カメラ本体を作ったテルモ社には、心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。あなたがたの製品とシステムがなかったら、シンスケは今、この場にいなかったでしょう。
素晴らしい製品・サービスは、人(猫)を幸せにしてくれる、ということを改めて実感しました。
改めて考えると、「スマホ連携」、「モーションセンサ」、「ナイトビジョン」の3点って、迷い猫捜索に必要かつ十分な機能だという気がします。
その後の猫
シンスケが帰ってきてから数日が経ちました。帰ってきた当日から、もう以前とあんまり変わらずくつろいでいるようです。ひとつ変わったことと言えば、なんとなく甘えてくるようになったことでしょうか。外でよほど怖い目にあったのか、以前よりも家が好きになったようですし、私たち人間に対しても、なんだか恩義を感じてるようなそぶりを見せてきます。閉め出したのは私だし、むしろこちらが申し訳ないんですが。ごめんよ。
【Safieリアルねこあつめ 2】自動給餌器と格闘する猫
つい最近、猫たちににまる1日ほど留守番してもらった日がありました。そんなときは、いつもこれに頼ってます。普通の自動給餌器。
(12時20分:まだあきらめない)
以前、帰ってきたら自動給餌器のフタが外れてたことがあったんですが、こんなことが行われていたとは。当時は自分がフタを閉め忘れたのかと思ってました。
(12時30分:お、あきらめたみたい)
(14時20分:でもやっぱり気になる)
そして夜になり・・・
(20時ごろ:再チャレンジ開始)
(テーブルの隅まで引き寄せる)
(そして落とす!こいつ頭よすぎだろ)
まさかの「落として壊す作戦」。勘弁してくれ。猫ってこんなに知恵が回ったんでしたっけ。
(落としたとき裏替えってしまったので、頑張ってひっくり返す)
(成功!ほんとすごいな、こいつ)
(ときどきカメラをチェックする。見られてるのわかってるのかな。化け猫??)
(それでも今回は開けられず)
(給餌器があかないストレスからか、棚の中の大事な書類を引っ張り出して噛みまくる)
この後、給餌器そのものを部屋の隅っこに持っていってしまったのでカメラに映らなくなってしまいました。ですが、やっぱりどうも、このゴマばかりが餌を食べているような感じがするんですよね。
かわいそうなシンスケ(もう一匹の猫)。もう少し検証して、対策を考えないといかんなと思う夏の一日でした。
Safieを導入したときの記事はこちら。このカメラ、やっぱり優れものです。本来の用途は防犯カメラなので、夜でもけっこうちゃんと映るんです。猫が活動的な夜の光景を見られるのはうれしいな。