飼猫・野良猫中央研究所

北洋祐のブログ。主に猫のこととスタートアップ・新規事業のこと。

ペット関連市場の動向など(テレ東、チャージ730)

ひょんなことから、テレビ東京の朝のニュース番組「チャージ730」の取材を受けることに。テーマは「ペット関連市場の動向」とのこと。

私、動物愛護の研究はしていますが、正直なところ「ペット市場」についてはそこまで詳しくなくて、受けるべきかどうかとても悩んだのですが、せっかくの機会なのでありがたくお受けすることにしました。これを機に勉強もできますし。

もう取材は終わっていて、そのうちオンエアされるのではないか(あるいは全カットされてるかも)と思いますが、家で趣味的に下調べしているときに結構面白いデータも出てきたので、ここで紹介しておこうと思います。

世帯あたりのペット関連支出は(品目によっては)伸びている

ペット関連の市場データは色々な調査会社が出していて、結果もけっこうばらばらだったりするので、どれを見るべきか悩みます。そこでまずは基本に立ち返って官庁統計を見てみました。総務省の「家計調査」。

これをみると、世帯あたりのペット関連支出はリーマンショック後の2009年以降は少しずつ下落し、その後2013年を境に上昇、といった動きを見せているようです。(これに各年の世帯数をかけるとざっくりとした市場規模がわかるのですが今回は割愛。)

f:id:kita_yoo:20160327135145p:plain

ちなみに、このデータは、ペットを飼っていない世帯も入れた平均支出なので、「ペットを飼っている世帯」だけを見れば、これよりもかなり大きくなります。

ペットを飼っている世帯は全体の20%程度だと見積もると、おおよそこのデータを5倍したくらいの金額が、「ペットを飼っている世帯における平均的なペット関連支出」だと思われます。ざっと8万円~10万円くらいでしょうか。

 

そして、このグラフを品目別に見たものが以下のグラフです。

これをみると、ペットフードは景気の影響を受けて2009年以降かなり下がっているけれど、動物病院代やその他のペットグッズやサービスに関しては比較的順調に伸びているようです。

f:id:kita_yoo:20160327152412p:plain

ペットのうち大きな部分を占める「飼い犬」の数は、2009年ごろを境にむしろ減っているので、つまりこれは、ペット1匹あたりにかける支出が増えている、と言える(と思う)。

f:id:kita_yoo:20160327154339p:plain

こうなると、「なぜペット1匹あたりの支出が増えているのか」というところが気になります。(テレビ局の方も、そこが気になっているようでした)

仮説:ペットへの支出が増えている理由は、ペットと人の関係が変わったから

よく言われていることではありますが、やはりこれ↑に尽きるのではないかと。「ペットの家族化」と言いますか、ペットを自分たちの子どもや伴侶のように扱う人が増えていて、ペットに人間並みの医療を施したり、高級な製品・サービスを与えたりするようになっているのでしょう。その背景には、少子化によって子どもの少ない、あるいはいない家庭が増えていることも影響しているかもしれません。

 

「ペットの家族化」と「ペット関連支出の増加」のつながりに関しては、一つ面白いデータがあります(下図)。これは、ペット保険業界最大手のアニコム損害保険株式会社が、自社のペット保険加入者に対して行ったアンケートで、ペットにかける年間支出を調査したものです。

f:id:kita_yoo:20160327174621p:plain

これによると、ペット保険加入者が猫にかける年間支出は約18.5万円、犬にいたっては36万円という結果になっています。すごい。

一方で、上のほうで取りあげた「家計調査」の結果では、ペットを飼っている世帯における平均的なペット関連支出は8万円~10万円ということでしたから、この2つの結果には大きな開きがあることになります。

これはつまり、「ペット保険に入っている飼い主は、平均的な飼い主よりもペットに対してものすごくたくさんのお金を使っている」ということを意味しています。

ここで、「ペット保険に入っている飼い主」は、ペットの家族化がかなり進んだ飼い主さんであろうことを考えると、「ペットの家族化が進んだ世帯ではペット関連支出が大きい」と言えそうで、上で述べた「ペットの家族化がペット関連支出の増加に繋がっている」という仮説は、あながち見当はずれでもないように思われます。

ペット関連市場の先行き

上で述べたことが本当だとすると、この先、ペットの家族化がもっと進んでいけば、ペット関連市場はさらに大きくなっていくかもしれません。ただ、飼い犬がどんどん減っていっているので、そこが難しいところですね。

飼い犬の減少に歯止めがかかるのか、どうなのか。代わりに飼い猫が増えていると言われていますが、上で挙げたデータからもわかるとおり、猫って犬ほどお金がかからないので、犬の減少を穴埋めする(嫌な言い方ですが)のは難しいようにも思います。

まとめ

  1. ペットにかける「医療費」や「ペットフード以外のペットグッズ・サービス費」が伸びている
  2. これは、ペットを自分の子供や伴侶として扱う「ペットの家族化」が大きな原因
  3. 「ペットを家族として扱う人」であると思われる「ペット保険加入者」は、平均的な飼い主に比べてペット関連支出が段違いに大きく、「2」を裏付けている
  4. ペットの家族化が今後も進めば、ペット関連市場も成長するかも。でも、「飼い犬」の減少が深刻なマイナス要因なので、長期的にどうなるかは不透明。

反省など

下調べが足りず、取材の場では少しいいかげんなことを喋ってしまったような。たいへん申し訳ないです。また、喋っていたことの半分くらいは、お世話になっている動物病院の医師の方に教えていただいたことです。受け売りです。

取材の場では言えなかったことですが、今回のテーマ「ペット市場の成長」に関して、市場の成長が動物にとってマイナスに働くことになってはいけないと強く思っています。ペット関連市場のプレーヤー企業は、成長によって生まれた利益を動物愛護にどんどん回していただいて、人と動物の共存共栄が実現できるとよいなと思っています。

猫に幸あれ!

 

f:id:kita_yoo:20160327185105j:plain

(この記事を書いているときの膝の上の状況)

 

f:id:kita_yoo:20160327185048j:plain

(今日、散歩中に見かけた野良猫。黒っぽい三毛猫)

 

庭の野良猫

f:id:kita_yoo:20160122050850j:image

 
2年くらい前のこと、朝起きてカーテンを開けると、わが家の庭で野良猫が子どもを産んでいるのに気づいた。猫のひたいほどの狭い庭。
 
ほんとうに突然のことで、どうしていいかわからず、ただ眺めるだけの日々。子猫たちは1日中、テラスの床板の下で寝てるか、上に出てきて母猫の乳を飲んでる。
 
かわいすぎる。でもどうしていいかわからない。
 
数週間くらいはいてくれただろうか。そのうち母猫も子猫も皆、いなくなってしまった。どこかで元気に生きていてくれるといい。なかなか難しいかもしれないけど。
 
あのとき、捕まえて育てたり愛護団体に託したりという選択肢もあったけれど、そうはしなかった。今同じ状況になっても、やはりしないだろう。
 
母猫がいて、ちゃんと育てている限りは、人間の出る幕はないのかなと。

直立する猫

子どもの頃から大切にしている熊のぬいぐるみ ・・・・・、ではなくてですね、

f:id:kita_yoo:20160114005930j:plain

その正体は、わが家を代表する生粋の元野良猫シンスケ氏であります。

f:id:kita_yoo:20160114005909j:plain

 アジの刺身につられて立ち上がる

f:id:kita_yoo:20160114005836j:plain

 この絶妙のバランス感覚を・・・見よ!

f:id:kita_yoo:20160114010103j:plain

 腹がモフモフ

こたつと猫、小淵沢駅の野良猫、他

少し遅い冬休みをとって山梨県小淵沢にある小さな宿で一泊。囲炉裏や火鉢が現役で活躍している。寒い地域で部屋には隙間風も入り込むけれど、火のそばにいれば存外に暖かい。大きな炬燵(こたつ)もあるし熱燗もある。防寒対策は完璧。

f:id:kita_yoo:20160112232104j:plain

 

こたつと言えば、電気の無い時代のこたつは練炭を入れた壺のようなものを中に入れて暖かくしていたそう。こたつの中に猫が入り込んで寝てしまったりすると、一酸化炭素中毒でそのまま亡くなってしまうことも多かったとか。

同行者の実家でも昔、そのような古いこたつを使っていたそうで、小さいころに3匹くらいの猫がこたつの中で亡くなったらしい。そうした事故が「よくあること」として比較的あっさり受け入れられていたことに隔世の感がある。

昔は「飼い猫」といっても、外に出てネズミやトカゲを食べてたまに家に帰ってくるくらいのもので、飼い主との関係ももう少し緩くあっさりとしたものだったんだろうか。今はもう、飼い猫は完全に「家族」の一員で、家族特有の湿っぽい関係になっているけど、猫にとってはどっちがよかったのか。ちょっとわからないな。

わが家でも飼い猫を家族として溺愛していて、安全のためにと言って外にも出さないようにしているけど、彼らはそれを窮屈に感じているんじゃないかと思うこともしばしば。

小淵沢駅の猫

帰りがけにJR小淵沢駅で野良猫の一団を見た。このような寒い土地だと冬を越すのは一苦労だろう。

f:id:kita_yoo:20160112232128j:plain

全部で4匹。そのうち1匹はけっこう人なれしていて、ちょっとだけ触らせてくれた。グレーがかった黒猫で、毛色が美しい。でもちょっと風邪気味だったかな。

f:id:kita_yoo:20160112232141j:plain

他の3匹は、まあ、野良猫らしい野良猫で、人とは一定の距離を保っている。奥の黒猫は先ほどの黒灰色猫のお母さんらしい。近所の人がつけた名前は「クロ母さん」。そのまんまだが良い名前。

本当に寒い土地なので心配だけれど、頑張って生き抜いてほしい。

地面から生える猫

休みの日にはときどき新宿御苑を散歩する。ここの一角には「ラクウショウ」という、アメリカ大陸原産の木が生えていて、気根がにょきにょきと生えている様がなんともいえず魅力的だ。

この気根について、「湿地帯に生える植物だから、土中に空気が少なく、呼吸のために気根を生やす」ということなのだと理解しているけれど、あってるのかな。しかし、こんなに摩訶不思議な光景、ほかでは見たことない。ということは、湿地帯に生える木が全て気根を持っている訳ではないのだろうか。他の植物はどうやって呼吸しているのか。謎は深まる。

f:id:kita_yoo:20160112232210j:plain

この気根の中に、なんだか猫っぽい奴がいる・・・。わかるかな。中央の、これです、これ。

f:id:kita_yoo:20160112232226j:plain

猫っぽい!

変な形だなあ。美しい。

新年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。

昨年は本ブログをごひいきにして頂き、ありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。 

わが家の今年の年賀状は、下のようなデザインでした。もちろんゴマ氏とシンスケ氏がモチーフであります。

f:id:kita_yoo:20151217163751j:plain

 

近所の野良三毛猫

このところ、家の近所の野良猫がずいぶん減ったような気がする。以前は庭でも日に3~4匹の猫は見かけたものだけれど、最近は1匹見るかみないかというところ。猫のたまり場になっていた近所の公園も閑散としている。

野良猫を不妊・去勢手術して元の場所に戻す、いわゆる「地域猫活動」をしている人が増えている結果なのか。私は地域猫活動の是非についてまだ判断を保留している身だけれど、近所から野良猫が全くいなくなることに関してはやっぱり寂しいと感じてしまう。

そんな中、近くの古ぼけたマンションの屋上に良い感じの野良猫がいらっしゃったので撮影してみた。柿の木と汚れた壁、錆びたフェンス、そして三毛猫。なんだか昭和っぽい。美しい。

f:id:kita_yoo:20160104231559j:plain

f:id:kita_yoo:20160104231606j:plain

私の目には、彼はとてもくつろいでいて、生を謳歌しているように映る。でも、ほかのある人にとっては、彼は寒空の下、孤独で空腹に耐える不幸な猫に映るのだろうか。

結局、猫自身が自らの境遇をどう思っているかは人間にはわからない。野良猫である彼らが不幸なのか幸せなのか、本当のところは私たちにはどうやってもわかりようがない。

地域猫活動をしている人は、基本的に彼ら(野良猫たち)を不幸だと考えていて、だからこそ、「不幸な猫をこれ以上増やさないため」に、野良猫の不妊・去勢手術に取り組む。

一方で私は、彼ら(野良猫たち)を不幸だとはどうしても言い切れない。もっと言うと、野良猫が不幸なのか幸せなのかは人間が判断できない類の問題だと思っていて、「野良猫は不幸だ」という前提のもとに行われる諸々の活動に違和感をもってしまう。

大雑把に言うとそんなところだろうか。もちろん例外はたくさんあるので、そのあたりはまた改めて整理したいけど。

スターウォーズを見た

いきなり猫とは全然関係ないけど、お正月にスターウォーズ エピソード7を見た。私はこれまでスターウォーズにあまり関心がない部類の人間だったけれど、今作を見てけっこう好きになった。

エピソード7単体としても面白かったし、今さらだけど、スターウォーズに出てくる機械とか乗り物ってかっちょいいな、と関心したり。これは最近、ロボットとか金属加工に関わることが多くなっているからだろうか。とにかく、BB-8(劇中に出てくるアンドロイド。)のデザインと動きがサイコーですよ。

そしてこのBB-8、オモチャではあるけれど、かなり精巧なものがすでに商品化されています。

http://www.sphero.jp/starwars/

ソフトバンクのペッパーとかいう極めてイケてないロボットとは違うぜ。ペッパーはどれだけ高機能でも家に置いておきたくはないが、BB-8なら特に役に立たなくても一緒に生活したい。近い将来、一家に一台ロボットがいる時代になったとしても、日本の大企業が作ったロボットがスタンダードになることはないんじゃないだろうか。

上で挙げたBB-8のオモチャは、spheroという米国のロボット玩具ベンチャーの製品で、この企業は映画で使用したBB-8の実物の開発段階から関わっていたという。素晴らしいプロダクトが大企業ではなくてベンチャーから生まれるというのはそれだけで本当に希望が持てる話だし、日本にもイカしたロボットベンチャーはたくさんあるので、将来がとても楽しみ。

あと、映画の感想としては、「レイ可愛い」ということと、「フィンはファーストオーダーの中に一緒に育った同僚がたくさんいるのに、あんなにあっさり星ごと爆発させるようなことしてしまってよいのだろうか。」とか、「レイヤは若い頃より今のほうが美しいな」とか、そのあたりのことを思っていた。もう1度くらい見に行きたいな。

 

野良猫の生息個体数の推計②_千葉県の平成21年調査

前回は以下のような記事を書きましたが、今回はその続きです。

shashin.hatenablog.com

 すでに何回か引用している「全国動物行政アンケート結果報告書」によれば、野良猫の個体数に関する調査を実施している自治体は全国でも数が非常に少なく、東京都、千葉県、金沢市大阪市豊中市の5自治体だけとのこと。

このうち東京都が実施した調査については前回検討したので、今回は千葉県の調査について考えてみよう。

千葉県は、住民向けアンケートと現地調査を組み合わせて野良猫数を推計している

千葉県の調査は、平成21年に実施されたものが最新のよう。けっこう昔だ。

犬猫の飼養実態調査結果について/千葉県

調査の方法は、簡単に言うと、県内の飼い猫と野良猫を以下のような形で4種類に分類し、アンケート調査と現地調査を組み合わせて、Ⅰから順に算出していき、最後にⅣの数(野良猫数)に辿り着く、というもの。

 

f:id:kita_yoo:20151014225705p:plain

 

具体的には以下のような感じ。

STEP1:住民向けのアンケートで猫の飼育状況について把握

住民アンケートで、猫の飼育状況を把握し、Ⅰ:Ⅱ:Ⅲの比率を求める。
この比率に、別途推計した「県内の飼い猫の総数」をかけることで、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲそれぞれの数を算出。

f:id:kita_yoo:20151014225729p:plain

STEP2:現地調査で「首輪ありの外猫」と「首輪無し外猫」の割合を算出

 現地調査によって、屋外にいる猫のうち、「首輪をした猫(Ⅱ)」と「首輪をしていない猫(ⅢとⅣ)」の比率を算出。
STEP1で、ⅡとⅢの比率はわかっているので、ⅢとⅣの比率もわかる。

f:id:kita_yoo:20151014225734p:plain

STEP3:仕上げ

あとは、Ⅲの数に、ⅣとⅢの比率をかければ、Ⅳが求まる。推計の結果、千葉県内の野良猫は17万5千匹という結果に。

f:id:kita_yoo:20151014225744p:plain

計算の過程を見る限り筋は通っているように思える。また、この数は千葉県内の飼い猫数の約3分の1ということで、感覚的にもしっくりくるような気がする。

いちおう、ここでⅠ~Ⅳの比率をチェックしてみよう。

 

f:id:kita_yoo:20151014225751p:plain

 

気になる点としては「首輪をしていない外飼いの猫」が猫全体の16%もいるということだ。ううむ。これはどうなのだろう。ちょっと多すぎじゃないだろうか。この中には「餌やりさんが餌をあげてる野良猫」がかなり入っているのではないか。

もう、いっそのこと、首輪をしていない外猫は全て「野良猫」とカウントしてしまったほうがすっきりするような気もする。このあたりは「野良猫」の定義の問題なので、また改めて考えてみる必要がありそうだ。

 まとめ

このように、他人が企画・実施した調査の過程を追っていくのは楽しい。この千葉県の調査は、かなり練り込まれた内容になっていて、限られた予算のなかでしっかりしたアウトプットを出しているなと感じられる。担当の方はご苦労されただろう。出ている数字も、けっこう実際の数字に近いのではないかと思うけれど、どうなんだろう。

野良猫の生息個体数の推計は、どうもまだ方法が確立していないようなので、他の手法も色々と試しながら、精度を高めていくのが良いのだと思う。。

自分でも、そのうち何かの方法を考えたい。

野良猫の生息個体数の推計①_東京都の平成23年調査

日本にどれくらいの野良猫がいるのかを把握したい。

犬の殺処分数がかなり減ってきたこともあり、最近は猫の殺処分がクローズアップされるようになってきた。でも、以前の記事でも書いたけれど、殺処分される猫の半分くらいは野良猫が産んだ子猫なのであって、殺処分を減らそうとすると「野良猫問題」と真剣に向き合わないといけなくなる。

だけど、その野良猫問題を考えようにも、「そもそも日本には今、どれくらいの野良猫がいるの??」という基本的なことさえ、ほとんどわかっていないようなのだ。

こんなに身近な「野良猫」の、生息数すらわからないなんて、けっこう不思議な感じがする。それなりの予算を使えば比較的簡単にわかりそうなものだけど、おそらく魚とかの「資源」としての生き物と違って、猫はこれまで、生息数の調査に費用をかける「必要性」が低かったんだろう。

でも、これからはちょっとずつ、その「必要性」が高まっていくのではないか。

というわけで(?)我々も、「野良猫の生息数の把握」にチャレンジしてみよう。今回はひとまず、過去の調査結果のおさらいから。

東京都の平成23年調査

東京都では、平成23年に「東京都における犬及び猫の飼育実態調査」を実施しており、その中で「猫の個体生息数の推定」を試みている。現地調査の実施方法と推計方法については以下の通り。

現地調査方法
東京都の都市計画区域を対象に、GIS(地理情報システム)を用いて1kmメッシュを発生させ、その中から任意のメッシュ30箇所を無作為抽出し現地調査対象地域を設定した。各メッシュの中心点をスタート地点として、公道に沿った現地調査ルート(5km程度)を設定した。ルートセンサス法により、各現地調査ルート上をゆっくり歩き、ルートの片側5m、両側で10mの可視範囲に確認した猫について、頭数、確認時間、首輪の有無、耳カットの有無、子猫・成猫の区別、確認時の行動、個体の特徴を記録した。調査時間は日中(おおむね9時~16時)として実施した。

このような調査の結果、141.24haの調査面積の中で33頭の「屋外猫」を確認したとのこと。

推定方法

そして、屋外猫の生息数の推計方法は以下の通り。

屋外猫の推定頭数 =確認頭数 / 調査面積 × 都市計画区域面積 ÷ 発見率

「確認頭数」::現地調査で確認された猫の頭数、
「調査面積」:調査ルートの総延長×10m(道の両側5m)
都市計画区域面積」:島嶼部を除いた都市計画区域面積

ちなみに、この「発見率」、というのは「調査エリアの猫全体に占める、現地調査で発見できる猫の割合」のことで、東京都の過去の調査で、その値は0.43ということになっている。つまり、あるエリアの中に100匹猫がいたとすると、この調査方法だと平均して43匹くらい見つけられる、ということです。

上記の式の中に、現地調査で得た数値と発見率を放り込んだ結果、東京都の市街化区域にいる外猫は約8万頭という推計結果に。なるほど、東京都の市街化区域に野良猫が8万頭か・・・。

猫密度に換算すると、55匹/k㎡。つまり、1キロメートル四方のエリアの中に平均して55匹の猫がいる計算…。

いや、なんかおかしい。少なくない!?わが家なんて、23区内の公園とかも少ないエリアにありますが、200m四方くらいのエリアに確実に5~6匹はいますよ。何か、現地調査方法か推計方法に問題があるのでは?

調査エリアの設定の問題

まず、怪しいのは調査エリアの設定方法。この調査では、公道の両側5メートルを調査エリアとして設定して、人口密度ならぬ「猫密度」を調査し、その「猫密度」が都内の市街化区域全域で一定だと仮定している。

でも、公道の両側5メートルって、野良猫いなくないですか?野良猫がいるのって、だいたい公園とか駐車場とか空き地とか人の家の庭とか、公道からは少し遠くて見えにくいところじゃないですか?

つまり、この調査だと、猫が多くいるスポットが調査エリアから外れてしまっていて、その結果、猫密度が過小に評価されており、推定結果が実態を大きく下回っているのではないかと思われる。

「発見率」の問題

もう一つの問題は「発見率」の値。

昼間(9時~16時)に公道を歩いて調査して、そのエリアの猫の4割を発見できるなんて、ちょっとおかしいんじゃないだろうか。

猫好きの人ならご存じの通り、昼間の猫はだいたいじっとしてるし、野良猫が人の目につく危険なところにいるとも思えない。そして、そのような状態の猫を人が歩きながら見つけ出すのはとても困難だ。

そもそも、この発見率の0.43という数字、どこから来たのだろう。過去の調査を探してみると、以下のようなものが。

東京都「東京都における猫の飼育実態調査の概要」(1999)

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/horeishiryou/siryou.files/nekojittaityousa.pdf

これによると、発見率は以下の方法で算出されたとのこと。

発見率の算出
調査範囲:東京農工大学構内(0.23km2、ルート長3.6km)
調査回数:1 日5 回×10 日間計50 回
結果:調査範囲内では26 頭の猫が確認されているが、ルートセンサス法による平均発見個体数は11.3 頭であった。
発見率:平均確認個体数/生息実数=0.43

まず、気になるのは、調査範囲が大学構内だということ。大学は公道とは違い、猫にとってかなり安全な環境だと思われるので、油断した猫たちが昼間でもけっこう目に付くところで寝てたりするんじゃないだろうか。だから発見率がかなり高く出てしまっているのでは??

あとは、この大学、すごく猫多いですね。「調査範囲」の面積は(ルート長3.6㎞×10m)3.6ヘクタールで、そこに26頭の猫がいるという。これは1k㎡あたり722頭という猫密度で、平成23年度調査で東京都が算出した猫密度の実に14倍という圧倒的な数字。

これが本当だとすれば、このような「特殊な」エリアをサンプルとして算出した「発見率」を、都内全体に当てはめるというのは、かなり無茶なことだと言えそうです。

野良猫の生息数推計の難しさ

これらのことから、東京都の野良猫数は、この調査結果の8万匹よりも、少なくとも数倍にはなるのではないかと感じる。
 

なんだか既存の調査にケチをつけるだけで今回は終わってしまった。しかし、こうして調べてみると、改めて「野良猫の生息数の把握」がかなり困難な作業だということがわかってくる。

少なくとも、人が目視で野良猫を数えて「猫密度」を把握して、それを全域に当てはめるというやり方は、どうやっても正確な数値は出ないような気がする。なにか別のアプローチが必要なのだろう。

東京都の他にも、千葉県がまた別のアプローチで推計をしているので、次回はそれをしっかり調べることにしようかな。