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飼猫・野良猫中央研究所

北洋祐のブログ。主に猫のこととスタートアップ・新規事業のこと。

野良猫の生息個体数の推計①_東京都の平成23年調査

日本にどれくらいの野良猫がいるのかを把握したい。

犬の殺処分数がかなり減ってきたこともあり、最近は猫の殺処分がクローズアップされるようになってきた。でも、以前の記事でも書いたけれど、殺処分される猫の半分くらいは野良猫が産んだ子猫なのであって、殺処分を減らそうとすると「野良猫問題」と真剣に向き合わないといけなくなる。

だけど、その野良猫問題を考えようにも、「そもそも日本には今、どれくらいの野良猫がいるの??」という基本的なことさえ、ほとんどわかっていないようなのだ。

こんなに身近な「野良猫」の、生息数すらわからないなんて、けっこう不思議な感じがする。それなりの予算を使えば比較的簡単にわかりそうなものだけど、おそらく魚とかの「資源」としての生き物と違って、猫はこれまで、生息数の調査に費用をかける「必要性」が低かったんだろう。

でも、これからはちょっとずつ、その「必要性」が高まっていくのではないか。

というわけで(?)我々も、「野良猫の生息数の把握」にチャレンジしてみよう。今回はひとまず、過去の調査結果のおさらいから。

東京都の平成23年調査

東京都では、平成23年に「東京都における犬及び猫の飼育実態調査」を実施しており、その中で「猫の個体生息数の推定」を試みている。現地調査の実施方法と推計方法については以下の通り。

現地調査方法
東京都の都市計画区域を対象に、GIS(地理情報システム)を用いて1kmメッシュを発生させ、その中から任意のメッシュ30箇所を無作為抽出し現地調査対象地域を設定した。各メッシュの中心点をスタート地点として、公道に沿った現地調査ルート(5km程度)を設定した。ルートセンサス法により、各現地調査ルート上をゆっくり歩き、ルートの片側5m、両側で10mの可視範囲に確認した猫について、頭数、確認時間、首輪の有無、耳カットの有無、子猫・成猫の区別、確認時の行動、個体の特徴を記録した。調査時間は日中(おおむね9時~16時)として実施した。

このような調査の結果、141.24haの調査面積の中で33頭の「屋外猫」を確認したとのこと。

推定方法

そして、屋外猫の生息数の推計方法は以下の通り。

屋外猫の推定頭数 =確認頭数 / 調査面積 × 都市計画区域面積 ÷ 発見率

「確認頭数」::現地調査で確認された猫の頭数、
「調査面積」:調査ルートの総延長×10m(道の両側5m)
都市計画区域面積」:島嶼部を除いた都市計画区域面積

ちなみに、この「発見率」、というのは「調査エリアの猫全体に占める、現地調査で発見できる猫の割合」のことで、東京都の過去の調査で、その値は0.43ということになっている。つまり、あるエリアの中に100匹猫がいたとすると、この調査方法だと平均して43匹くらい見つけられる、ということです。

上記の式の中に、現地調査で得た数値と発見率を放り込んだ結果、東京都の市街化区域にいる外猫は約8万頭という推計結果に。なるほど、東京都の市街化区域に野良猫が8万頭か・・・。

猫密度に換算すると、55匹/k㎡。つまり、1キロメートル四方のエリアの中に平均して55匹の猫がいる計算…。

いや、なんかおかしい。少なくない!?わが家なんて、23区内の公園とかも少ないエリアにありますが、200m四方くらいのエリアに確実に5~6匹はいますよ。何か、現地調査方法か推計方法に問題があるのでは?

調査エリアの設定の問題

まず、怪しいのは調査エリアの設定方法。この調査では、公道の両側5メートルを調査エリアとして設定して、人口密度ならぬ「猫密度」を調査し、その「猫密度」が都内の市街化区域全域で一定だと仮定している。

でも、公道の両側5メートルって、野良猫いなくないですか?野良猫がいるのって、だいたい公園とか駐車場とか空き地とか人の家の庭とか、公道からは少し遠くて見えにくいところじゃないですか?

つまり、この調査だと、猫が多くいるスポットが調査エリアから外れてしまっていて、その結果、猫密度が過小に評価されており、推定結果が実態を大きく下回っているのではないかと思われる。

「発見率」の問題

もう一つの問題は「発見率」の値。

昼間(9時~16時)に公道を歩いて調査して、そのエリアの猫の4割を発見できるなんて、ちょっとおかしいんじゃないだろうか。

猫好きの人ならご存じの通り、昼間の猫はだいたいじっとしてるし、野良猫が人の目につく危険なところにいるとも思えない。そして、そのような状態の猫を人が歩きながら見つけ出すのはとても困難だ。

そもそも、この発見率の0.43という数字、どこから来たのだろう。過去の調査を探してみると、以下のようなものが。

東京都「東京都における猫の飼育実態調査の概要」(1999)

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/aigo/horeishiryou/siryou.files/nekojittaityousa.pdf

これによると、発見率は以下の方法で算出されたとのこと。

発見率の算出
調査範囲:東京農工大学構内(0.23km2、ルート長3.6km)
調査回数:1 日5 回×10 日間計50 回
結果:調査範囲内では26 頭の猫が確認されているが、ルートセンサス法による平均発見個体数は11.3 頭であった。
発見率:平均確認個体数/生息実数=0.43

まず、気になるのは、調査範囲が大学構内だということ。大学は公道とは違い、猫にとってかなり安全な環境だと思われるので、油断した猫たちが昼間でもけっこう目に付くところで寝てたりするんじゃないだろうか。だから発見率がかなり高く出てしまっているのでは??

あとは、この大学、すごく猫多いですね。「調査範囲」の面積は(ルート長3.6㎞×10m)3.6ヘクタールで、そこに26頭の猫がいるという。これは1k㎡あたり722頭という猫密度で、平成23年度調査で東京都が算出した猫密度の実に14倍という圧倒的な数字。

これが本当だとすれば、このような「特殊な」エリアをサンプルとして算出した「発見率」を、都内全体に当てはめるというのは、かなり無茶なことだと言えそうです。

野良猫の生息数推計の難しさ

これらのことから、東京都の野良猫数は、この調査結果の8万匹よりも、少なくとも数倍にはなるのではないかと感じる。
 

なんだか既存の調査にケチをつけるだけで今回は終わってしまった。しかし、こうして調べてみると、改めて「野良猫の生息数の把握」がかなり困難な作業だということがわかってくる。

少なくとも、人が目視で野良猫を数えて「猫密度」を把握して、それを全域に当てはめるというやり方は、どうやっても正確な数値は出ないような気がする。なにか別のアプローチが必要なのだろう。

東京都の他にも、千葉県がまた別のアプローチで推計をしているので、次回はそれをしっかり調べることにしようかな。