飼猫・野良猫中央研究所

主に猫のこととスタートアップ・新規事業のこと。

深センのハードウェア・スタートアップ・アクセラレータ「HAX」について

(@kitayooo)と申します。

今年の8月に、とあるツアーに参加して中国の「深セン」に行ってきました。

そのツアーは、チームラボの高須さんが主催する「ニコニコ技術部深セン観察会」。深センのメイカーズやハードウェア・スタートアップを取り巻く生態系を3日間かけて巡るというもので、とにかく刺激と情報量が多く面白い。

このツアーでは、参加者がそれぞれレポートを書くことになっていて、他のツアー参加者のレポートは以下のページにまとまっている。

第5回ニコ技深圳観察会(2016年08月) 感想まとめ:tks(高須 正和)のブロマガ - ブロマガ

他の皆さんが既にこれだけの記事を書いているので、自分は他に何を書くべきかと悩んでいるうちに、なんと、もう秋も深まる11月の終わりになってしまった。これはいかんと思いなおし、訪問先の中でも自分が特に関心を持ったところについて深堀してみようかと。それが、深センのハードウェア・スタートアップ・アクセラレータ「HAX」についてです。

 

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(HAXのオフィスに行った!)

ハードウェア・スタートアップ支援者のビジネスモデルが気になる

 今回、深セン観察会に参加した動機の一つは、以前から個人的に考えていた疑問に対する答えを見つけたいと思ったことだった。つまり、「ハードウェア・スタートアップへの支援」というものは、事業として成り立つものなんだろうか、ということ。もっと言えば、どうやったら「ハードウェア・スタートアップ支援」を持続性のある取り組みにできるんだろうか、ということだ。

日本でも、ハードウェア・スタートアップ支援を打ち出す企業が増えて盛り上がりを見せているけど、それが現状で事業として成り立っているかというと、どうもそう簡単なものではないらしい。今はまだ、各社が将来への期待から採算を度外視して取り組んでいるとしても、成果があがらなければ遅かれ早かれ撤退に追いやられてしまう。

そうなったら、せっかく充実しつつある「メイカーズのエコシステム」が縮小してしまうかもしれない。そんな個人的な疑問・懸念があって、世界で最も発達した「メイカーズのエコシステム」を持つと言われる深センで、そのヒントを見つけたいと思ったのだった。

そして、深セン観察会では実際に、メイカースペースやインキュベーション施設、量産工場など、エコシステムの中核をなす「ハードウェア・スタートアップの支援者」をいくつも訪問することができた。

そのなかでも、HAXはビジネス的にも(なんとなくの印象ではあるが)成功しているように見え、ここを詳しく調査してみると、先ほどの疑問の解消へのヒントが得られるかもしれないと感じられた。

というわけで、本記事では、HAXが「どのようなビジネスモデルを持っていて」、「どこを強みとしていて」、「どれくらい上手くいっているのか(あるいはいないのか)」、というところについて、あらためて調べて行きたいと思う。

 HAXのビジネスモデル

HAXのビジネスモデルは、高須さんの言葉を借りると「まだ会社の体をなしているか怪しいぐらいのよちよち歩きのハードウェア・スタートアップに対して出資し、ノウハウを与えて大企業に育て上げ、投資を回収する」というものだ。

観察会参加者であるJETROの木村公一朗さんが書いたレポートには、HAXの活動内容が簡潔にまとまっているので、引用させていただきたい。

HAXはベンチャーキャピタル(VC)SOSVの一部門で、フランス人のCyril Ebersweiler氏やBenjamin Joffe氏らが2011年、潘氏も関わりながらハードウェア系アクセラレータとしてこれを設立した。(中略)

HAXは半年ごとに15チーム(チームは3~5名体制が多い)を選んで、各社に資金を提供するとともに、事業を軌道に乗せるため、プロトタイピングやサプライチェーン管理、マーケティングクラウドファンディングなどの各種アドバイスを111日間にわたって行う(最後の2週間はサンフランシスコでデモを行う)。

これに対してHAXは、2万5千米ドルの資金提供であれば6%、10万米ドルであれば9%の株式を取得し、最終的にはスタートアップがIPO(新規株式公開)かM&A(合併・買収)でエグジットする際に資金回収することを目指す。卒業チームの出自と割合は、北米が約60%、欧州が約20%、アジアが約20%(中国が多い)であり、世界中の起業家が珠江デルタサプライチェーンを活用しながら、新製品を開発してきた。

 <引用元>木村公一朗『中国: 深圳のスタートアップとそのエコシステム(増訂版)』(2016年8月)

http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Overseas_report/1608_kimura.html

 スタートアップ・アクセラレータとは?

上で述べたHAXのようなビジネスモデルを持つ主体は、「スタートアップ・アクセラレータ」、あるいは単に「アクセラレータ」と呼ばれる。その起源は、2005年にスタートした「Y Combinator」にあって、それ以降、世界中で多くのアクセラレータが登場している。

リッチモンド大のSusan Cohen教授は、アクセラレータの定義について以下のように述べている。(ざっくり訳してしまったので、間違いがあったらご指摘ください) 

 アクセラレータは、スタートアップがビジネスモデルを定義し、有望な顧客セグメントを特定し、最初の製品・サービスを作り上げるための支援を行う存在である。そのために必要な資金や従業員といったリソースの確保に向けた支援もアクセラレータの役割に含まれる。

 具体的には、アクセラレータはスタートアップを定期的に募集・選考し、採択されたスタートアップに対して小額の出資を行うとともにワークスペースを提供し、3ヵ月間程度の「アクセラレータ・プログラム」を提供して、彼らの事業化プロセスを支援する。プログラムの期間中には、同じプログラムに参加するスタートアップ仲間との深い繋がりができ、また、メンターとのネットワーキングの機会を得ることもできる。メンターとなるのは、例えば、成功経験を持つ起業家やプログラムの卒業生、VC、エンジェル投資家、大企業の経営者などである。多くの場合、プログラムの最後には、VC等の投資家に向けた製品・サービスのお披露目会(Demo Day)が開催される。

<出所> Susan Cohen(2013)「What Do Accelerators Do? Insights from Incubators and Angels」http://www.mitpressjournals.org/doi/pdf/10.1162/INOV_a_00184

近年では、アクセラレータの数が増えて活動内容も多様化しているようだけれど、HAXの活動はかなり基本に忠実で、上の定義に示された事項はだいたい全て当てはまる。

 HAXを取り巻く競争環境

 HAXのアクセラレータ・プログラムに参加するスタートアップは主に欧米出身で、彼らはプログラム期間を終えると基本的にそれぞれの国に戻って事業化に取りかかる。そして、次に彼らの資金調達先となるのはシリコンバレーの投資家たちだ。

つまり、HAXは欧米で活動する他のアクセラレータとの競争に打ち勝ち、より有望なスタートアップを集め、また投資家を惹きつけていく必要がある。そして、このアクセラレータ間の競争が、今はかなり厳しいものになっている。

米国のシンクタンク「ブルッキング研究所」のレポートによれば、2015年時点で米国だけで170以上のアクセラレータが活動しているらしい。HAXの設立は2011年なので、ちょうどアクセラレータが急増し始めたころだ。

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<出所> Ian Hathaway(2016)「Accelerating growth: Startup accelerator programs in the United States」

https://www.brookings.edu/research/accelerating-growth-startup-accelerator-programs-in-the-united-states/

 

ここまで数が増えると、アクセラレータの市場も飽和しつつあるようで、評判の悪いアクセラレータは既に撤退に追い込まれている。

なにせアクセラレータは人気商売のような側面があって、評判の良いアクセラレータに有望なスタートアップや資金が集中しやすい。その結果、ひとにぎりのトップ・アクセラレータがダントツの成績をおさめてどんどん求心力を高めていく一方で、下位のアクセラレータには良いスタートアップも資金も集まらず、にっちもさっちもいかなくなっていく。

こんな生き馬の目を抜くような「アクセラレータ業界」にあって、HAXは後発組でありながらも、一定の評判と存在感を獲得しているように見える(HAXのプログラムに採択されるのは応募者の5%以下で倍率が20倍以上とのことなので、スタートアップからの人気の高さがうかがえる)。それはなぜだろうか。

 HAXの強み(他のアクセラレータとの比較)

 HAXのアクセラレータ業界のなかでの強みは、どこよりも早く「ハードウェア」に着目して特化したこと、そして、ハードウェアの開発・製造に適した深センに拠点を構え、そのエコシステムにしっかりと根を張っていることにある。

HAXの前身であるHAXLR8R(ハクセラレータ)の設立は2011年だから、いわゆる「メイカームーブメント」が世界的に注目される前年という絶妙のタイミングだった。アクセラレータとしては後発でも、ハードウェアの分野では世界初でナンバーワン。それがHAXの掲げた看板だ。

さらにHAXは、活動の拠点を深センに構え、当時はまだ脆弱だった深センの「メイカーズのエコシステム」に参加し、その発展に寄与してきた。そうすることで、深センのエコシステムが持つ強みが、そのままHAXにとっての強みとして活かされることになった。

(そのあたりの経緯については、高須さんの著作『メイカーズのエコシステム』に詳しく書かれている)

メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。 (NextPublishing)

HAXのウェブサイトには、アクセラレータ・プログラムへの応募を検討するスタートアップに対して「なぜわざわざ深センで開発する必要があるのか」を説明する文章が載っていて、これがまさに、他のアクセラレータには無いHAXの強みを端的に表している(そしてこれは同時に、他の地域にはない深センのエコシステムの強みでもある)。ざっくりと訳してみよう。

 中国(深セン)で開発するべき4つの理由(HAXのウェブサイトより)

01/ 深センは製造の現場に近い。深センにいれば、製品がどうやって作られているか、その開発と製造のプロセスを最初のところから理解することができる。そして、このことはハードウェアを作るうえでは極めて重要なことだ。

 02/ 深センのエンジニアは余所とは違う。深センのエンジニアは、コストの制約ありきで設計することに慣れている。これは、他の国のエンジニアが機能優先でコストを考慮しない傾向があるのと対象的だ。

 03/ 深センには山寨(Shanzhai)の文化がある。華強北の電気街で売っているような安っぽいソーラーランプやニセモノのiPhoneのなかには、しばしば面白い技術や便利な部品が入っていて、それらは近くの工場に行けばすぐ手に入る。それらをあなたが開発している製品に組み込んだっていい。そんな体験は他の国ではまずできない。

 04/ 深センでは開発コストが安い。そして、深センにいることで中国市場についての理解を深めることができ、将来的にそこであなたの製品を売る際に役立つ。

製造現場への近接性、エンジニアとのネットワーク、独特のものづくり文化、開発コストの低さ。これらはまさにHAXだけが持つ強みで、このことがHAXのアクセラレータとしての競争力を支えていると考えられる。

 

※以下、加筆・修正(2016/12/3)

本記事の公開後、HAXのGeneral PartnerのBenjamin Joffeさんとメールでやりとりをしていて、HAXの「強み」について補足してもらった。HAXの強みは、上で挙げているもの以外に、以下の3つがあるよ、とのこと。

HAXの強み

  • プログラムの内容:これまでに、5年間にわたりアクセラレータ・プログラムを運営して、100を超えるスタートアップを支援してきた。その過程で常にプログラムを改善してきており、その結果はクラウドファンディングでの達成額などにも顕著に現れてきている。
  • コミュニティ:HAXのプログラムの全ての卒業生が、メンターとして後輩の手助けをしてくれる。
  • 応募者の質と数:HAXはハードウェアの分野に特化した最初のアクセラレータであり、最も成果を出しているアクセラレータだ。だからこそ、世界中から最高のスタートアップが応募してくれる。

このように、アクセラレータは最初の立ち上げに成功してプログラムの回数を重ねていくと、その運営経験を通してノウハウや資源(コミュニティ等)を獲得し、どんどん内容を改善していくことができる。また、そのなかできちんと成果を出していけば、評判が高まってさらに有望なスタートアップを集め、成果につなげやすくなる。

これは、アクセラレータだけでなく、全ての「ハードウェア・スタートアップの支援者」にとって重要なポイントだと思う。

HAXの生み出している成果

このように、アクセラレータ業界の中で独自のポジションを確立しているHAXだが、実際のところ彼らのビジネスはどの程度「上手くいっている」のだろうか。

 実は今回、この点について客観的に分析しようとして、あまりうまくいかなかったという経緯がある。

HAXのプログラムの卒業生と、他のアクセラレータの卒業生の現状(活動状況、資金調達状況、イグジット状況)を整理して、両者の成績を比較しようとしたのだけれど、そもそもまだイグジットには至っていないスタートアップがほとんどだし、資金調達については公開されていないケースも少なくない。なので、それなりに時間をかけたのだけれど、結局「公開情報だけでアクセラレータの成績を評価することは困難」ということがわかっただけだった。(この記事の終わりのほうに、その悪戦苦闘の記録を残してあるので、もし関心を持っていただける方がいれば読んでみてください。。)

そこで、今回は客観的な評価は諦めて、またしても後からHAXのJoffeさんに連絡をとって、HAXの卒業生の現状について教えてもらった(2014年の第4期生について尋ねた)。非公開の情報も多いので、個別の企業名は出さずにまとめると以下のようになる。

HAX4(2014年)採択スタートアップの現状

  • 活動状況:HAXの4期目(2014年)のプログラムに採択された11社のスタートアップのうち、2016年11月の時点で活動をストップしているのは2社で、残りの9社は活動を続けている。そのうち3社は先行きが不透明な状況だが、他の6社は活発に活動している。
  • 資金調達:11社中、4社は100万ドル以上の資金調達に成功している。(HAXの母体であるSOSVからの調達も含む)。それ以外のスタートアップも、100万ドルには満たないが、それなりの金額を調達している。
  • イグジット:スタートアップがイグジットするには平均すると7~8年の時間がかかる。なので、2014年のプログラム卒業生がイグジットするとしても、それはもう少し先の話になる。

ちなみにこれは、事前に私が公開情報で整理した内容とはけっこう異なっている(特に資金調達の状況が)。やはり非公開の情報が多いみたいだ。だとすると、他のアクセラレータの卒業生も同様に非公開の情報が多いだろうから、アクセラレータ間の比較はやっぱりどうやっても難しいということだろう。

ともあれ、11社中6社が2年後の今も活発に活動していて、そのうち4社が100万ドル以上の資金調達に成功しているというのは、アクセラレータの成績としてはかなり優れたものだということは間違いない。

また、この他にも、JoffeさんからはHAXの成果やこれからのプランについていくつか教えてもらったので、公開できるものだけ紹介しておきたい。

  • HAXのプログラムは年々進化していて、最近のプログラムのほうが、より大きな成果が出ている。例えば、HAXの卒業生のなかで、KickStarterで100万ドルを超える調達に成功したスタートアップが9社いるが、その全てはここ2年間のプログラムから出ている。しかも、これらの9社は全部、KickStarterでの調達額トップ100に入っている。
  • 最近は、ロボティクスやヘルスケアの領域で、BtoBのビジネスを目指すスタートアップも増えていて、その中には、VCから100万ドル以上の調達に成功するケースも多くなってきている。(BtoBだとKickStarterは使わないことが多い)
  • ハードウェアの分野は、ソフトウェアに比べて資金調達までに時間がかかる。というのも、多くの投資家は、最初のプロダクトが市場でどう評価されるかを見てから投資の判断をくだしたがるからだ。HAXの場合、VCからの資金調達までに、プログラム卒業から6~18か月くらいかかることが多い。プログラムに参加したスタートアップの、本当の意味での成果がわかるのは、プログラムの卒業から最低でも4年くらいかかる。

まとめにならないまとめ

アクセラレータ」というビジネスモデルは、その成果が確定するまでに10年くらいの時間がかかるので、設立5年くらいのHAXがどのくらい「上手くいっている」のかは、結局のところまだよくわからない。

でも、HAXは競争の厳しいアクセラレータ業界のなかで、確かに高い評判を獲得して成果を生み出しており、かなり成功に近いところにいると言ってよいのではないかと思う。

HAXのビジネス的な成功は、「ハードウェア・スタートアップ支援」が事業として成立する可能性を示しているとも考えられ、これはとても希望が持てる話だ。

観察会での訪問やその後のやりとりを通じて、個人的にもすっかりHAXを好きになってしまったので、今後も継続的にHAXの動きについては追って行きたい。

今のところ、HAXのプログラムに応募する日本のスタートアップは本当に少ないみたいだけど、Joffeさん自身は日本との縁がかなり深い人で、日本からの参加者が増えることを心から願っているようだった。

もし、この記事を読んでくださっている人のなかで、HAXのプログラムへの応募を考えている人がいれば、ぜひ挑戦してみていただきたい。(そしてプログラムの実態などを教えてください!)

 

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 (HAXオフィスはすごくわくわくした)

 

 

 

 

 

 

 ※以下はボツ原稿です。何かの参考にはなるかもしれないと思い、残しておきます。

すごいスタートアップ・アクセラレータとは

アクセラレータ業界の中で独自のポジションを確立しているHAXだが、実際のところ彼らのビジネスは「上手くいっている」と言えるのだろうか。

そのことについて考えるうえで参考になりそうな資料を1つ見つけた。その名も「Seed Accelerator Ranking Ploject」

http://seedrankings.com/pdf/sarp_2016_accelerator_rankings.pdf

 

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<出所>Brian Solomon(2016)「The Best Startup Accelerators Of 2016」

http://www.forbes.com/sites/briansolomon/2016/03/11/the-best-startup-accelerators-of-2016/#10e09e0524f2

これは、リッチモンド大学、ライス大学、MITなど複数の大学が関わる研究プロジェクトで、独自の調査に基づきアクセラレータを評価し、ランキングを発表するという取り組みだ。残念ながら、このランキングにHAXは入っていないのだけれど、ここにランクインしているアクセラレータと比べることで、HAXの業界内での位置についても推測できるかもしれない。

ちなみに、このランキングでは、順位そのものを公表するのではなくて、上位のアクセラレータを松・竹・梅の3段階に分けて公表している。その内訳は、松が9件、竹が7件、梅が7件。集計対象は米国で活動する150のアクセラレータらしいので。アクセラレータとして「成功している」いうのは、「梅」に入るくらいがボーダーラインだろう。(上位1~2割くらい)

そこで、「梅」のアクセラレータを一つサンプルとして抜き出してみて、HAXの成績と比べてみることにした。抜き出したのは、HealthWildcatters。「梅」のカテゴリをざっと調べてみて、各年のプログラム採択スタートアップを全て公表しているところを選んだ。

http://healthwildcatters.com/companies/

なお、評価の軸は、「Seed Accelerator Ranking Ploject」にならうことにする。つまり、各アクセラレータのプログラムに参加したスタートアップの「イグジットの状況(IPOまたは500万ドル以上でのM&A)」、「20万ドル以上の資金調達の状況」、そして「活動状況(生存状況)」だ。

この他にも、「企業価値」や「プログラム参加者の満足度」といった指標が挙げられているが、これは調べきれないので諦めた。

けっこう手間がかかりそうだけどやってみよう。まずHAXから。

 HAXのプログラム採択企業の現状

 HAXで取り上げるのは、2014年の通算4回目のアクセラレータ・プログラムにした。これを取り上げた理由は、初期のプログラムよりは、ある程度回数を重ねた後のプログラムのほうが成果が安定しているだろう、というのと、あまりに最近のプログラムだと、まだ成果がはっきりしていない可能性がある、と考えたからだ。

ちなみに、通常のアクセラレータでは、プログラム卒業後の資金調達と言えばVC等からの出資を意味することがほとんどだが、ハードウェアを専門とするHAXでは、それらに加えて、KickStarterなどの購入型クラウドファンディングでの資金調達も重視しており、集計時にはこれを考慮した。

調べてみると、このような結果に。

 HAXアクセラレータ第4期生の現状

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 <出所>筆者作成

これをみると、「活動状況」については、11件中6件が製品・サービスを販売中、3件が開発中、2件が活動停止。「資金調達」に関しては、25万ドル以上の資金調達に成功した企業は11件中8件だったが、その内容を調べてみると、そのうち4件はHAXの母体のSOSVが出資者になっていた。また、「イグジット」した企業はいなかった。

 HealthWildcattersのプログラム採択企業の現状

 同様に、HealthWildcattersの2014年の採択企業について見てみよう。結果は以下の通り。

HealthWildcattersのプログラム(2014年)採択スタートアップの現状

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<出所>筆者作成 

このように、「活動状況」については、製品・サービスの提供を開始しているのは10社中4社。「資金調達」については、100万ドル以上の資金調達に成功した企業が3社ある。そして「イグジット」は無し。うーむ。